アンティークが織りなす、飾って楽しむ私らしい家
アンティークをめぐる日常
憧れるのは、北欧や南欧の自然豊かな美しい村に、そっと佇んでいるような家。
たっぷり厚く塗った漆喰の壁に、古びた木の扉、門から続く石だたみの小道。
素朴な景観だけど、絵本に出てくるようなかわいらしさがあります。
室内に入ると、何代も受け継がれたような家具があり、古い柱や梁とともに歴史を感じさせてくれます。
いつかそんな家に、大好きなアンティークを好きなだけ飾って暮らせたら……、と思っていました。
色褪せてはいるけれど、佇まいの美しいフレンチアンティークのトルソー、ペンキが剥がれ落ちて、シャビーな風合いになったクラシカルな柱時計。
紳士服を着こなす陶器のキツネに、本物の鹿の角。
蚤の市で見つけたアンティークは、木やレンガ、漆喰などを使った古びた建物にしっくりなじみます。
キズや色褪せがあっても、見る人が見れば、魅力はまだまだ失っておらず、むしろ今でも輝きを放っています。
アンティーク好きにとって、実用的かそうでないかは意味をなさず、心がひかれたかどうか、インスピレーションを得て、わくわくした気持ちになれるかどうかが重要なポイントなのです。
手入れをしながら受け継ぐもの
手に取って眺めて、そのものが持つストーリーに思いを馳せる。
いつの時代、どこの町や村の職人かはわからなくても、丁寧に作られたことが一目見てわかる銀細工や刺繍。
きっと最初に買った人は、それを大切に扱い、自分に必要でなくなった時に誰かに譲ったのだろう、などと想像することも、アンティークの楽しみ方の一つです。
自分の手に渡った幸せを感じつつ、傷んでいるところがあれば修復して使います。
古いペンキを落としてみると、むき出しの木の風合いに味わいがあり、あえてそのまま使うことも。
古びた椅子の生地を張り替え、木枠をお手入れすると、見違えるように素敵な姿になります。
また、小さな引き出しの並ぶ道具棚にアクセサリーをしまうなど、本来の使い方ではない用途に使うのも面白いところ。
時代や地域が違っても、ミックスされていい雰囲気を醸し出すこともあります。
同じものには二度と出会えないかもしれない、という気持ちが、ものを大切にすることにつながるのかもしれませんね。
リメイクしたり、修復したりしながら、家での新たなシーンに加えられ、暮らしになじんでいきます。
住まいも、床やキッチンのタイルなど、日々のお手入れは必要ですが、毎日暮らしているうちに愛着をもつようになってきます。
とくに自然素材である漆喰、無垢のフローリングや柱は、キズができたり、へこんだりすることもありますが、自分の手で修復も可能です。
魅力的なアートとともに過ごす空間づくり
個性的なファブリックや、アンティークのレース、古い陶器や置物などが、実用とインテリアを兼ねて、上手にディスプレイされている室内。
北欧や南欧のおうちの、額に入れたアートや雑貨をたくさん飾っても、全体がしっくりなじんでいるセンスは、お手本にしたいところです。
お気に入りをたくさん飾るためには、たっぷりとした壁面が必要です。
白い漆喰はキャンバスのように、それぞれのコレクションを受け止めてくれます。
集めたアンティークを分類して、ディスプレイを考えるのは、密かな楽しみ。
乱雑に見えないようにするために、色味を揃えたり、並べ方にルールを設けたり。
あれこれと、どう飾ったらいいバランスになるのか、ゆっくりじっくり考えて、なんとなくいい具合になったら、部屋の魅力がぐんとあがったようで、嬉しいですよね。
ぬくもりのある壁、古びた木の質感。
窓際に植物と、風に揺れるカーテン。
好きな飲み物を用意して本の世界に没頭していると、時間が過ぎるのがあっという間に感じます。
古い洋書や画集に囲まれて、美しい表紙の装丁や挿絵、紙の質感を楽しみながらページを繰る午後。
ゆったりした時間を過ごすために、きちんと座り心地のいい椅子を選ぶことは、かなり大事なポイントかもしれません。
貴族が使っていたかもしれないアンティークの寝椅子や、美しい刺繍が施された肘掛け椅子。
昔からその場所にあったかのようになじんで、映画の世界に入り込んだような非日常感を味わえそうです。
部屋は自分らしさをあらわすもの
ミニマリストの家も、フレンチシックの家も、レンガのぬくもりある素朴な家も、誰かの日常を紡ぐ住まいは「ああ、その人らしい」と思わせるものがあります。
置いている家具、飾っているアートや雑貨は、手元に置いて眺めたり使ったりしているうちに、暮らしの一部になり、溶け込んでいきます。
様々なライフイベントがあるたびに、部屋を模様替えしたり、家具を替えたりしながら少しずつ手を入れて、家も変化していきます。
時間が経つほどに、たくさんの思い出も増えていくでしょう。
古びてもきちんと手入れされた室内や庭は、人生をともに過ごすうちに、経年変化も魅力になります。
毎日使うものを大切に、長く使おうとする気持ち。
お気に入りの布や趣味の器を、飾って楽しむ暮らし。
季節を感じながら、手作りの料理をふるまう日。
何気ない日常に、楽しさを見出しながら過ごしているうちに、いつしか憧れていたような、どこかよい雰囲気を漂わせながら、佇むような家になるような気がしています。